中村航『僕の好きな人が、よく眠れますように』 感想・書評

書評

 

中村航『僕の好きな人が、よく眠れますように』(角川文庫)の感想・書評をいたします。

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こんなひとにおすすめ

  • 高校生
  • キュンキュンしたい人
  • 少女漫画が好き
  • 純粋なラブストーリーが好き

本当に純粋な「好き」が詰まっています。めちゃくちゃにときめきたい方はぜひ!

『僕の好きな人が、よく眠れますように』のあらすじ

東京の理系の大学で研究をしている大学院生の主人公。北海道からゲスト研究員として斎藤恵という女性がやってきました。2人はすぐに仲良くなるものの、彼女は既に学生結婚しており、北海道に旦那がいるという。それでも2人で飲み、遊びを繰り返して2人の距離は更に近づいていきます。
既婚である事実に悩まされながらも、お互いを純粋に思い続けます。

『僕の好きな人が、よく眠れますように』の特徴

まず真っ先に言いたいことは不倫小説であるということ。

でも、星の数ほどある、一般的な不倫小説と違います。性描写やドロドロとした人間関係は描かれていないんです。ただ、純粋な恋心のみを描いた作品なのです。お互いが一言ずつどれだけ相手が好きかを言い合ったり、人前で戯れあったり、イチャイチャしたり。「高校生的恋愛」とでも言えそうなバカップルぶり。

でも、そのバカップルぶりのみを描いているとことで爽やかさ純粋さが伝わってきます。付き合いたて・恋愛したての若者は、良くも悪くも皆共感できると思います。

ここまで吹っ切れられるのが素晴らしいです。

『僕の好きな人が、よく眠れますように』の感想・書評

この作品の魅力は主に3つにまとめられます。

①ユーモアのあるセリフ

彼らのかけ合う愛情表現も良いのですが、ともかく山田のワードセンスが良い。なんというか、上手いのです。言葉の表現が。彼が知り合っためぐみと木戸さんについて、このように表現する。

ともかくその春僕が出会った二人のうち、一人には旧姓があり、一人には偽名があった。30

 これを読んで私は感心してしまいました。面白い。二人の異質さがこんな短文で表現されるとは。

 

さらにこんな文章も。 

初めて握った道産子の手は、小さくて柔らかで、温かだった。105

想像を絶するほどの寒く、想像を絶するほど広大な北海道とその地に住む彼女自身を対比しております。なんて美しい文章なのでしょうか。作者の表現の仕方には圧倒されっぱなしでした。

 

②「木戸さん」という人

この作品には、主人公の仕事仲間であった木戸さんという人物が登場します。彼は相当変わっている人でした。一般的な人間が持っているあらゆる「普通」なものを捨てて、いろんなものを切り捨てて、優しさ強さを守り続けているのです

まともなロマンを求める人は、誰からも相手にされず、誰からも大切にされず、一人で自分を守り続けるしかない。本当はこういう人が、人知れず、世界の孤独とか悲しみとかを一身に引き受けてしまっている。152

正直で素直な人はいつだって報われないものですよね。自分を貫き通す人はいつだって孤独なのです。

このような人間像に感銘を受けた主人公は彼を「先輩」として崇めます。仕事では後輩だったのに。恋に悩める主人公に「人生の先輩」として突拍子もないアドバイスをしていきます。そんな様子は読者の心にも響くはず。私はなんだかんだで共感しました。

③すっきりとした文章

とにかく難解な言葉も無く、とても読みやすいです。

それはなぜか?と言うと、カップルのセリフが関係しています。まるでその場にいるかのような、リアルな会話が繰り広げられます。現実に本当にあるような、誰にも見せられない会話です。この本を読んでいると、2人だけで完結された世界の中に入っている気がして少し変な感じがします。

ねえ、

ん?

月より好き。

私は海より好き。

おれは、銀河より好き。

私は、銀河が砕けても山田さんを守るよ。(p.166)

 このように、あらゆる言葉を駆使して自らの愛情を表現します。潔いほどに1ページの中に「すきま」があります。小説を書く人にとってここまでシンプルに物を書くというのはかえって難しいような気がします。情景や心情などを克明に、詳細に表現したくなるからです。しかし、この「すきま」によってすんなりと感情が読み取る事ができ、早いテンポで読み進める事ができます。

セリフ以外も全てが洗練され、スッキリとした文章ですから、読むのに時間がかかりません。読書が苦手という方でさえ読めてしまえますよ。

おわりに

「結末が物足りなかった」という声をよく聞きますが、私はあれでよかったのではないかと思います。2人でいるということが、「当たり前」になっているということ。続編があるような、ただの日常的な日々こそが幸せなのではないかと思いました。
この本を読んで忘れかけていたものを思い出した気がします(笑)。気になった方はぜひ読んでみてください。

 

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