村上春樹作品の映画化がめちゃくちゃ難しい2つの理由

村上春樹

小説家として世界的に人気な村上春樹。

東野圭吾など、他の小説家に比べ、映画化する作品が非常に少ないんです。

 

村上春樹の作品は、映画化がとても難しいと言われます。

その理由は2つ挙げられます。

 

「作風」「文体」です。

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理由①:村上春樹の作風

現実離れした村上春樹作品

彼が生み出す作品の特徴の一つに、「ファンタジー」「シュールレアリズム」が挙げられると思います。

  • 「ファンタジー」=空想的・幻想的な作品。現実ではありえない空想の世界を描き出す。
  • 「シュールレアリズム」=超現実主義(現実を飛び越えたもの)。深層心理を扱った作品。夢の世界無意識の世界を表現する。

難しく考えないでください。簡単に言えば、「現実的ではない」のです。

ごく普通のリアルな日常生活だと思ったら、突然、当たり前のように架空の物が登場することが頻繁にあります。(例えば、『羊をめぐる冒険』の羊男。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の一角獣。『1Q84』のリトル・ピープル、二つの月など。)

 

つまり、現実世界のような設定であるのに、現実とは乖離したものがいきなり出てくるため、映像化(実写化)すると非常に違和感を覚えてしまいます。

 

テレビアニメを実写化すると、「あれは違う」「これはおかしい」などと批判が殺到するのはもはや毎度のことです。それからもわかるように、結局ファンタジーを実写するのは相当困難なものです。そしてそれは、現実と非現実を彷徨うような世界観である村上春樹の作風も同じなのです。

 

映画化されている作品の共通点

しかし今までには、映画化された村上春樹作品もあります。それらを見てみると、ある共通点が浮かんでくるのです。

 

それは、「リアリズム」の作品であること。

  • 「リアリズム」=現実主義。要はファンタジーでなくリアルな世界(現実)を描いているということ。

映画化された『ノルウェイの森』や『風の歌を聴け』『ハナレイ・ベイ』などは、上にある通り、「リアリズム」と言う枠組みに入ります。(厳密に言うと、非写実的リアリズム)

つまり、これらは村上春樹の作品の中でもとても例外的な作品であり、それゆえに映像化が可能になったのです。

 

 理由②:翻訳調のセリフ

しかし、その「リアリズム的作品」を映画化することも実は非常に困難なのです。

 

その理由は、村上作品に特徴的な「文体」が影響しています。

小説中に出てくる会話を「話し言葉」で再現することが困難なのです。

村上作品におけるセリフは、実際に声に出してみると分かりますが、自然体にすることができません。文章としては面白味がありますが、巷では「翻訳調」と言われるような文体であるため、まるで棒読みのようになってしまうのです。

 

「君のこと大好きだよ」と彼は言った。

「心から好きだよ。もう二度と話したくないと思う。でもどうしようもないんだよ。今は身うごきとれないんだ」

(『ノルウェイの森 下』講談社文庫p.232)

このあまり現実的でない奇妙な口調のセリフが、映像化を困難にします。しかし、その独特さは村上春樹の魅力の一つです。この独特のセリフ回しを取り入れたいと制作側も思うことでしょう。

 

しかし、映画化されたものを観てみると、その困難であった再現にとことん成功しているのです。

 

『ノルウェイの森』での克服

 

『ノルウェイの森』の主人公・ワタナベは典型的な「独特の口調」です。緑という女性に「私、あなたのしゃべり方すごく好きよ」と言われるくらいですから、その独特な喋り方を再現しなければいけません。この再現が成功したのは、間違いなくワタナベ役・松山ケンイチのおかげです。

 

  • 悲壮感のある表情
  • 孤独を醸し出す空気感
  • 控えめな振る舞い

など。そして「翻訳調」も完璧。無表情でボソボソとした喋り方はワタナベそのものです。他の出演者はキャスティングに関して、原作との乖離を批判されることが多々あるのですが、松山ケンイチの役のハマり具合は誰も文句を言いません。主人公の役がしっくりきたことで、この作品の完成度が格段に上がった。まさに彼にしかできない演技だったのです。

 

予告を見るだけでもそれはわかります ↓

youtu.be

 

『風の歌を聴け』での克服

 

村上春樹の処女作『風の歌を聴け』も映画化されました。この作品は、「まず英語で小説を書いて、それを日本語に訳す」というスタイルで書き始めたため、「翻訳調」というよりもはや「翻訳」そのものなのです。セリフもアメリカ的な言い回しが多く、日常会話であったらひどく奇妙になってしまいます。

 

「ねえ、俺たち二人でチームを組まないか?きっと何もかも上手くいくぜ。」

「手始めに何をする?」

「ビールを飲もう。」

(『風の歌を聴け』講談社文庫p.20)

この作品がその独特な文体を再現できたのは、昭和という時代のおかげであると言えます。

公開は1981年ということで、昭和の真っ只中です。昭和時代の演技というのは、現代とかなり違って、どこか「演技感」が強く感じられるものです。現代は現代で、特徴的な演技の仕方があるようですが、昭和時代はまるで文章を読み上げているような感じがします。

 

そのような演技が、『風の歌を聴け』の翻訳調のセリフととてもマッチしたのです。セリフだけでなく、原作の世界観やイメージを損なわずにここまでやり遂げることは相当困難だったかと思います。素晴らしい監督やキャストの方々だと改めて実感します。

 

村上春樹作品の映画を楽しもう!

村上春樹の映画化された9作品全てをまとめた記事です。あらすじと予告もありますのでぜひ参考にしてください!↓

www.humblerap.com

 

まとめ:村上春樹は天性の小説家気質でした

世の中にはあらゆる表現形態がありますが、このようなテーマを考えると、いかに村上春樹が小説という表現形態に特化している・優れているかが分かります。映画を見て興味を持ったのなら、小説も是非読んでみて下さい。

 

ありがとうございました。

 

 

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