
村上春樹の最新作『一人称単数』が7/18に発売しました。
どこよりも早く全作品のあらすじをまとめました!
「ネタバレなし」でご紹介します!
短編集『一人称単数』の収録内容
収録作品は以下の8作品です。
- 石のまくらに
- クリーム
- チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
- ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles
- ヤクルト・スワローズ詩集
- 謝肉祭(Carnaval)
- 品川猿の告白
- 一人称単数
※各作品は、文芸雑誌の『文學界』に掲載済み。1〜3(2018年7月号)、4〜5(2019年8月号)、6(2019年12月号)、7(2020年2月号)。
おすすめの読むべき作品を太字にしました。
まずはそこから読んでみてはいかがでしょうか!
『一人称単数』全8作品のあらすじ(ネタバレなし)

簡単なあらすじ&見所解説をしたよ!
早速みてみよう!
①『石のまくらに』
『ノルウェイの森』を思い出させるような村上節。
大学時代に「僕」は、四ツ谷にあるレストランでアルバイトをしていた。あるとき同じ職場の年上女性と、一夜を共にする。自ら短歌を作っていることを告げていたその女性は、「僕」の住所に歌集を送る。それきり彼女と会うことはなかったが、その短歌のいくつかが僕の心に残っている。まだ彼女はこの世に生きているのかを思い馳せる。
前半3作品の中でいちばんの目玉作品。
僕は彼女の顔も名前もはっきりと覚えていませんが、短歌だけは心の中に刻まれているのです。やはり村上春樹は、男女関係を描く作品が本当に魅力的です。

いくつもの短歌とともに物語を進める新しさも魅力です。
②『クリーム』
謎が謎のまま終わる。カフカ的雰囲気。
18歳で浪人中だった「ぼく」は、同じピアノ教室に通うあまり親しくない女の子からリサイタルに誘われる。「ぼく」は花束を買って山の上のリサイタル会場に行く。しかし、辺りには誰もおらず、鉄の扉で会場は閉まっていた。
近くの公園に行き座っていると、いつの間にか老人が目の前にいることに気づく。老人は「中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円をきみは思い浮かべることができるか?」と問いかけてくる。
この作品、好き嫌いがはっきり分かれます。
不可思議な出来事が起こり結論がないまま終わるという、これも村上春樹らしい作品です。老人のキャラクターを見た時、『図書館奇譚』に出てくる老人を思い出しました。理不尽な存在であるが、何かを啓示しているようです。
③『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』
村上春樹お得意の、リアリティを持った架空の話。
主人公が大学生の頃に書いたレコードの批評である。レコードはジャズで有名なバード=チャーリー・パーカーが1963年に録音した『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』である。
さらにその15年後、アメリカの中古レコード店でそのレコードと再会するのだ。しまいには夢の中でチャーリーパーカーに出会い演奏を聴くことになる。
実はそんなレコードは実際に録音されていないし、存在すらしていません。
1955年に既に亡くなっているため、全くの架空です。こんなような話、『国境の南、太陽の西』でもありましたね。本人も、全くの架空の話をでっち上げて描くのが得意だとエッセイで語っていました。ジャズが大好きな村上春樹の描くお話です。
④『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』
表紙に隠れているビートルズはここから。
ビートルズ旋風が巻き起こっている高校生の時、「僕」は「ウィズ・ザ・ビートルズ」というレコードを持った美しい女性を校舎で見かるが二度と会えず、違う女性と付き合った。ある日彼女の家を訪ねたが、そこには彼女の兄しかおらず、彼と会話することになる。彼は芥川龍之介の『歯車』を朗読してくれと、僕に頼む。そして彼は、時々記憶を喪失することを話し出す。
奇妙な男性との死を連想させるような作品。
文章に余白があって、初期の村上作品を連想させ、かなり面白い構成になっております。ビートルズ好きで有名な村上春樹ですが、ここまで詳細に語ったのは初めてかもしれません。

静かで上品で、どこか不気味な世界観。
⑤『ヤクルト・スワローズ詩集』
「村上春樹が書いた詩」なんて聞くと興味出ますよね。
東京ヤクルトスワローズの大ファンである村上春樹のエッセイ。
こちらは短編小説ではありません。
皆さんはスワローズといえばどのようなことを思い浮かべますか….?野球ファンなら食い入るように楽しめることができるはず。「負ける」ということについての持論を語っており、これまた面白いです。休憩程度に読んで見てはいかがでしょうか。
⑥『謝肉祭(Carnaval)』
「彼女は、これまで僕が知り合った中でもっとも醜い女性だった」
「僕」は、今まで知り合った中でもっとも醜い女性とコンサート会場で出会う。彼女の容姿は醜いが、好きな音楽は僕と共通しており、特にシューマンの「謝肉祭」を愛していることがわかる。音楽を通じて深く語り合い、二人は意気投合する。しかし、このような関係も半年で消滅してしまう。
筆者はこの作品を本当にイチオシします。
「恋人は外見か内面、どちらを重視するのか?」といった問いは誰もが考えたことがあるはず。この作品はそんな内容を扱います。冒頭の「彼女は、これまで僕が知り合った中でもっとも醜い女性だった」から早速ヒヤヒヤしながら読み進めたのは、このご時世だからでしょうか。女性の容姿を事細かに描き、いかにひどいかを表現しています。ところがその醜さとは裏腹に、とても高尚な趣味を持ち洗練されている印象を持ちます。この落差が面白味を生んでいるのです。

仮面の奥に潜んでいるものは、何なのか。「僕」はそんなことを恐れます。
⑦『品川猿の告白』
5年前、一人旅をしていた「僕」は、群馬県の温泉の小さな旅館に泊まる。寂れた宿であったが、温泉は思いのほか素晴らしいかった。「僕」が温泉に浸っていると、年老いた「猿」がガラス戸を開けて風呂場に入り「失礼します」と湯に入ってくる。「僕」は「猿」と会話する。「猿」は恋した女性の名前を盗んで生きているという。
短編集『東京奇譚集』に収録されている『品川猿』の続編です。
村上春樹作品には、「羊」を筆頭に様々な動物が出てきます。そして当たり前のように喋ります。現実の中にファンタジーが入り込んで、面白味を生んでおります。

豊田徹也さんが書いた扉絵にある猿は、ここか来ているんだね!
⑧『一人称単数』
唯一の書き下ろし作品。
気持ちのいい春の夜。スーツをほとんど着ない「私」が、違和感を抱えながら突然スーツで街を歩き始める。
いつもとは違うバーにいくと、中年の女性に声をかけられる。「そんなことしていて、何か愉しい?」
「私」のことを不愉快に思うという彼女は、理不尽に「私」の全てを罵倒してくる。
限界がきて外に出ると、辺りは全く見覚えのない場所になっていた。
この短編集の主役とも言える作品。
洒落た格好をして、バーのカウンターでギムレットを飲みながら読書をする。都会的でスマートな典型的な村上春樹的主人公の行動です。村上春樹自身を思わせるそんな彼を、ひどく理不尽に批判する女性。一体何者なのでしょう。

バーに行き、女性に出会う。いつもなら親密になる展開ですが、今回は全く異なります。
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番外編:『一人称単数』って一体どういう意味なの?
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